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停留精巣(睾丸)について

停留精巣(睾丸)について

停留精巣とは精巣が陰嚢内に無い状態です。
子供が母親の胎内にいるとき精巣は腎臓付近のおなかの中にあり、成長とともに徐々に陰嚢へ下降してきます。男児の多くは、出生時には精巣は触れても陰嚢内には下降していない事も多いようです。
出生時に停留精巣を認めても、そのうちの70-77%は3ヶ月で自然と下降し、1歳時には1%しか停留精巣の状態ではないとの報告があります。しかしながら1歳の時点で停留精巣だった場合はそれ以上の下降は望めないようです。

停留精巣は、

移動精巣(retractile;精巣が陰嚢と鼠径部の間を上下する精巣で3-7歳までの男児でよく見られます。大部分の患者さんで加療の必要はありません)
鼠径管外停留精巣(extracanalicular;精巣は鼠径部付近に触れるも陰嚢内には下降しない)
鼠径管内停留精巣(intracanalicular;精巣は鼠径管内に触れるも陰嚢内には下降しない)
異所性停留精巣(ectopic ;精巣が下降するルートから外れたところに触れる)
腹腔内停留精巣(absent;精巣は体表からは触れない。腹腔内に正常大の精巣がある場合から萎縮した精巣しかない場合、精巣が無形成の場合がある)

に分けられます。
鼠径管:左右の下腹部(臍の45度外下方)にあり、腹壁の筋肉のトンネルのような構造物。その中を精管や精巣動静脈等が通っている。

また、停留精巣には鼠径部や陰嚢内の他の異常(鼠径ヘルニアや精巣上体の付着異常等)やホルモンバランスの異常(視床下部・脳下垂体・精巣のホルモン環境が精巣の下降に必要と言われています。ただし停留精巣の患者さんが必ずしもこのホルモン異常を受診時に伴っているわけではありません)や、尿道の異常(尿道下裂等)などを伴うこともあります。

停留精巣の発生原因は、ホルモンバランスの異常や精巣導帯(精巣を陰嚢内に固定している靭帯)の異常等が言われていますが確かな原因は現状では不明です。

正常な精子形成には通常の体温より1度ほど低い環境が必要といわれています。停留精巣は精子形成障害を起こすことは確実なようですが、精巣は陰嚢内に下降するまでが一連の発育過程であり(つまり停留精巣には発育障害があるとも考えられる)、精巣固定術にて陰嚢内に精巣を固定してもその精巣の精子形成障害が回復するかどうかは確実ではありません。

停留精巣には悪性腫瘍(癌)が発生しやすいことも確実なようです。精巣腫瘍の発生率はもともと少なく1万人に1-2人との報告が多いのですが、停留精巣には2550人に1人(40倍の発生率)との報告があります。これも精巣固定術にて陰嚢内に精巣を固定しても発生率が減るかどうかは確実ではありませんが、少なくとも精巣が陰嚢内にあることによって自分でも触ることが容易であり早期発見・早期治療には役立ちます。

治療を要する停留精巣には、その停留精巣の状態や位置、合併する状況等を考慮に入れて適切な時期に加療を行うことが必要です。1歳を過ぎての自然の下降はほとんど期待できないためこの頃に加療を考えるのがよいかもしれません。
治療は、ホルモン療法もありますが、一般的な有効率は20%以下といわれておりまた、かなり下方まで下降している停留精巣しか有効でないことが多く、精巣固定術が標的治療です。
精巣固定術は体表から触れる場合は全身麻酔下に鼠径部を1-2cmほど切開して行います。鼠径管外停留精巣は92%の、鼠径管内停留精巣は89%の成功率との報告もあります。
腹腔内停留精巣はMRI等で検索しても確実ではないことが多く、全身麻酔下に腹腔鏡にて精巣の有無、発育の状態を観察し、状況に応じて観察のみ、腹腔鏡下に精巣摘出、腹腔鏡下に精巣固定、腹腔鏡下に精巣血管を結紮し後日精巣固定を行う2期的手術を行います。

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