前立腺癌(前立腺腫瘍)について

前立腺癌(前立腺腫瘍)について

前立腺腫瘍(前立腺癌)について

前立腺癌は,日本では以前はあまり多くはなかったのですが,ここ最近,増加の傾向にあります。アメリカでは男性の癌発生率の第一位は前立腺癌であり,死亡率でも肺癌に次いで第2位を占めています。
日本でも人口の高齢化に加えて生活様式の欧米化が進み(欧米に比べ脂肪の少ない食事が良いと言われてきたのですが)前立腺癌は増加しています。2016年の推定罹患者数は、92600人と男性の癌の第一位で有り、以下胃癌・肺癌・大腸癌・肝臓癌と続きます。2016年の男性の癌死亡者数の推定は、前立腺癌は12300人で、肺癌・胃癌・大腸癌・肝臓癌・膵臓癌に次いで第六位です。2020年には2000年の前立腺癌死亡率の2.8倍になると推定されており,早期発見,早期治療の必要性が認識されつつあります。また,前立腺癌の罹患率は,加齢とともに急激に上昇します。
 前立腺癌の症状としては,排尿困難,頻尿,排尿痛,血尿,腰や下肢の痛みが代表的ですが,無症状のことも多いようです。

 診断方法としては下記のようなものがあります。
 直腸診:肛門より指で前立腺の性状を診察します。
 前立腺特異抗原(PSA):前立腺腫瘍の血液マーカーです。採血をして調べます。癌の早期発見に威力を発揮します。
 早期癌の発見には,このふたつの検査が重要であり,50歳を過ぎたら年に1回の検査は必要と考えます。

 確定診断には,前立腺生検が必要です。前立腺生検とは,尾底骨近辺に局所麻酔剤を注入して肛門周囲に麻酔をかけ(仙骨ブロック),エコーで観察しながら経直腸的に前立腺に針を刺して前立腺の組織を一部採取し,その組織を顕微鏡で見る検査です(病理検査)。検査当日は入院してもらう、2日の入院を要する検査ですが,実際に行っている時間は10分程度です。
生検によって得られた組織を下記の如くに組織分類します。
 高分化型,中分化型,低分化型(高分化から低分化になるほど癌細胞の勢いがよい)に分類する方法と
 Gleason score(グリーソン スコアー)2から10(7が中間で数が大きくなるほど癌細胞の勢いがよい)に分類する方法があります。

 確定診断後は,病気の拡がり具合の決定のため,CT,MRI,骨シンチ(全身の骨のレントゲン検査)が必要であり、時に膀胱尿道鏡(膀胱,前立腺の内視鏡検査),等が必要となります。これらの検査によって,TNM分類あるいは,Jewett Staging Systemによって, 病期を分類します。

TNM分類
T分類:身体的検査,画像診断,内視鏡検査,生検と生化学検査
N分類:身体的検査と画像診断
M分類:身体的検査,画像診断,骨格検査と生化学検査

T:原発腫瘍
T0: 原発腫瘍を認めない

T1: 触知不能または画像では診断不可能な臨床的には明らかではない腫瘍

T1a: 組織学的に切除組織の5%以下に偶発的に発見される腫瘍
T1b: 組織学的に切除組織の5%を越え,偶発的に発見される腫瘍
T1c: 針生検により確認(たとえばPSAの上昇による)される腫瘍

T2: 前立腺の限局する腫瘍

T2a: 片葉の2分の1以下に存在する腫瘍
T2b: 片葉の2分の1以上に存在する腫瘍
T2c: 両葉に存在する腫瘍

T3: 前立腺被膜を越えて進展する腫瘍

T3a: 被膜外へ進展する腫瘍
T3b: 精嚢に進展する腫瘍
T4: 精嚢以外の隣接組織に固定または浸潤する腫瘍
N:所属リンパ節
N0 所属リンパ節転移なし
N1 所属リンパ節転移あり
M:遠隔転移
M0 遠隔転移なし

M1 遠隔転移あり

M1a 所属リンパ節以外のリンパ節転
M1b 骨転移
M1c 上記以外の部位への転移

Jewett Staging System

病期A:臨床的に前立腺癌と診断されず前立腺手術(主に前立腺肥大症手術)においてたまたま組織学的に診断された前立腺に限局する癌

A1: 限局性の高分化型腺癌
A2: 中あるいは低分化型腺癌,あるいは複数の病変を前立腺内に認める

病期B:前立腺に限局している前立腺癌

B0: 触診では触れずPSA高値にて精査され組織学的に診断
B1: 片葉内の単発腫瘍
B2: 片葉全体あるいは両葉に存在

病期C:前立腺周囲には留まっているが,前立腺被膜は越えているか精嚢に浸潤する前立腺癌

C1: 臨床的に被膜浸潤が診断されたもの
C2: 膀胱頸部あるいは尿管の閉塞を来したもの

病期D:転移を有する前立腺癌

D1: 所属リンパ節転移
D2: 所属リンパ節以外へのリンパ節転移あるいは他臓器への転移

 治療は, PSAによる経過観察、手術療法、内分泌(ホルモン)療法、放射線療法、が主体であり,化学療法を組み合わせることもあります。いずれも治療効果は著名であり,前立腺癌への早期治療は,治療効果を高めるためには重要と考えます。

 公立館林厚生病院にて加療した前立腺癌の概要です。

表をスクロールしてご覧ください

1985年-1999年:373症例
2000年:45症例 2001年:36症例 2002年:46症例 2003年:123症例
2004年:109症例 2005年:68症例 2006年:94症例 2007年:101症例
2008年:86症例 2009年:103症例 2010年:73症例 2011年:100症例
2012年:100症例 2013年:108症例 2014年:103症例 2015年:102症例
2016年:99症例 2017年:90症例  2018年:97症例 

2003年に館林市前立腺癌検診を開始したのでその年から急激に増加しています。

前立腺癌病期分類

 2018年に発見された97症例(病期A:2例、B:67例、C:11例、D:16例)の初回治療の内訳(他医での加療症例や2019年での治療予定症例も含む)は、監視・待機療法32例、内分泌療法30例、手術療法17例、放射線療法(±内分泌療法)16例、その他2例でした。
治療方法は下記のようであり,手術療法と放射線療法は根治的治療の性格を有します。

監視・待機療法:
 監視療法(PSAを3月毎くらいで採血し、上昇傾向を認めたり1年後の再前立腺生検で悪化所見を認めるまで手術や放射線等の根治療法を待つ)や待機療法(PSAを3月毎くらいで採血し、上昇傾向あるいは症状出現を認めるまで内分泌療法等の加療を待つ)といわれる治療法で、治療の重要な部を占めています。前立腺癌は進行が遅いことが多いので厳重に進行具合を観察することによって治療の副作用を避けながら、前立腺癌による症状の出現や生命の危機を避けようとする治療法です。

手術療法:
 前立腺全摘術という手術です。前立腺および精嚢を摘出し,膀胱と尿道を吻合します。一般的にリンパ節も一緒に摘出します。当院では、腹腔鏡による前立腺全摘術を施行しております。当院泌尿器科では3D内視鏡による3D画像での腹腔鏡手術を行っています。3Dによる立体感のある拡大画像をみながら、より正確で低侵襲な手術ができる方法です。術後の疼痛コントロールのために医療用麻薬の持続的点滴を併用するので術後の痛みも少なく翌日には歩行できます。術後平均入院日数は10日です。主な合併症としては,出血(当科では自己血にて対処)等の手術時の身体への負担の他,術後の尿失禁(大部分で1ー3ヶ月以内に消失しますが,ごく軽度の尿失禁が残ることもあります),インポテンツ(勃起神経の温存術式で避ける事も可能)です。他に開腹術、ロボット支援下で腹腔鏡で手術を行う方法があります。

放射線療法:
 前立腺癌病巣の制御に効果があります。合併症としては膀胱炎(頻尿等),直腸炎(頻便等)が起こることがあり,晩期の合併症として膀胱や直腸よりの出血が見られることがあります。照射方法は外から放射線を前立腺に当てる方法(外照射)と前立腺に針を埋め込んで前立腺の中から放射線を当てる方法(組織内照射)があります。当院では放射線を多方向からあてて集中させる原体照射(3D-CRT)が可能であり治療効果を高めるため原則として13年間内分泌療法を併用します。他の外照射方法には、IMRT(強度変調放射線治療)や重粒子線の照射があります。

内分泌(ホルモン)療法:
 大部分の前立腺癌は男性ホルモン依存性であるため,男性ホルモンを抑制することによって前立腺癌の増大を抑えます。内分泌療法の合併症としては性欲減退や勃起力低下は必発であり,時に顔面紅潮や発汗・軽い筋力の低下・下腹部を中心として皮下脂肪の増大・血糖の異常・まれに脳心血管障害を来すことがあります。
 内分泌として代表的なものは下記の方法があります

  • 精巣摘出術(30分ほどの手術です。)
  • LHーRHアゴニストあるいはLHーRHアンタゴニストの皮下注射(4週毎あるいは12週毎あるいは24週毎の皮下注射にて脳からのホルモンによる命令を抑制して男性ホルモンを抑制します。)
  • 女性ホルモン(エストロゲン)剤(内分泌療法の中では最も効果的ですが,重篤な合併症として心血管障害があり,他にも浮腫,女性化乳房,肝機能障害を認めることがあります。)
  • 抗男性ホルモン(抗アンドロゲン)剤(時に女性化乳房,肝機能障害を認めます。)
  • 新規内分泌療法剤(抗男性ホルモン剤と男性ホルモン生産抑制剤があります。)

化学療法
ドセタキセルまたはカバジタキセルという抗癌剤での治療が一般的です。

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最終更新日:2019.05.09

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