腎盂・尿管癌(腫瘍)について

腎盂・尿管癌(腫瘍)について

腎盂尿管癌(腎盂癌、尿管癌)について

 腎臓で作られた尿は、腎臓の中央にある腎盂という部屋に集まり、そこから尿管を通って膀胱に運ばれます。そこに発生する腫瘍を腎盂尿管癌と言いますが、発生率は同じ尿路の癌である膀胱癌に比べかなり低い発生率です。

公立館林厚生病院の腎盂尿管癌の症例数は下記の様です。

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1990―2003年   43 症例
2003年: 8症例 2004年: 9症例 2005年: 6症例 2006年:12症例 2007年: 9症例
2008年:12症例 2009年:11症例 2010年: 5症例 2011年:10症例 2012年:15症例
2013年:11症例 2014年:11症例 2015年:13症例 2016年:15症例 2017年:11症例
2018年:11症例 2019年:12症例 2020年:12症例 2021年: 9症例 2022年: 4症例

腎盂尿管癌の症状は、血尿(75%以上の患者さんに肉眼的あるいは顕微鏡的に血尿を認めます)、腰背部から側腹にかけての痛み(30%程度の患者さんに認めます)等ですが、10−15%の患者さんでは無症状のようです。時に癌のある側の腎機能が無機能になっていることもあります。

診断には、画像検査では、 超音波検査(エコー)、CTが有用であり、稀に経静脈性腎盂造影や逆行性腎盂造影やMRI等が必要となります。尿管の内視鏡検査(尿管鏡)および内視鏡下生検にて確定診断が行えます。また、膀胱癌を合併することも多く膀胱の内視鏡検査も必要です。これらの検査により、腎盂尿管癌の性格の確定、拡がり具合、リンパ節や他臓器への拡がり具合を診断します。

上記諸検査によって病期診断、組織診断が行われます。
病期診断
TNM分類

T:原発腫瘍の壁内深達度

Tis: 上皮内癌
Ta: 粘膜にとどまる
T1: 粘膜下固有層までの浸潤
T2: 筋層までの浸潤
T3: 筋層を越えて腎盂や尿管周囲の脂肪組織あるいは腎実質におよぶ浸潤
T4: 隣接臓器への浸潤あるいは腎を越えて腎周囲脂肪組織への浸潤

N:所属リンパ節

N0: 転移なし
N1: 2cm以下の1個の転移
N2: 2cmから5cmの1個の転移または5cm以下の多発性転移
N3: 5cmを越える転移

M:遠隔転移

M0: 転移なし
M1: 遠隔転移有り

臨床病期分類
stage 0a :上記T分類がTaでリンパ節や遠隔転移が(N0,M0)
stage 0is :上記T分類がTisでリンパ節や遠隔転移ない(NO,MO)
stage 1 :上記T分類がT1でリンパ節や遠隔転移ない(N0,M0)
stage 2 :上記T分類がT2でリンパ節や遠隔転移ない(N0,M0)
stage 3 :上記T分類がT3でリンパ節や遠隔転移ない(N0,M0)
stage 4 :上記T分類がT4あるいはリンパ節や遠隔転移がある(N1,M1)

組織学的分類
 腎盂尿管癌の大部分は尿路上皮癌であり、尿路上皮内癌・低異型度非浸潤性乳頭状尿路上皮癌・高異型度非浸潤性乳頭状尿路上皮癌・浸潤性尿路上皮癌が代表的な尿路上皮癌です。

治療は、手術が原則となります。他に、化学療法や免疫療法も有効です。

手術
 腎尿管全摘術が標準的な手術方法です。開腹術で行う場合と腹腔鏡を使用して小切開にて行う方法(腹腔鏡下手術)があります。手術は、腎臓、尿管、膀胱の尿管入口部を周囲の脂肪組織、リンパ節、とともに一塊に摘出する術式です。私たちの施設では、中・下部尿管癌やおとなしいタイプの腎盂癌・上部尿管癌では腹腔鏡を使用した後腹膜鏡下腎尿管全摘術を施行し、リンパ節郭清を要する腎盂癌や尿管癌および癒着が予想されるタイプの症例は開腹術を施行しています。また、当院泌尿器科では腹腔鏡下手術を3D内視鏡による3D画像で行っています。3Dによる立体感のある拡大画像をみながら、より正確で低侵襲な手術ができる方法です。手術時の麻酔は、全身麻酔ですが、術後の疼痛コントロールのために鎮痛剤の定時的点滴を併用するので術後の痛みも少なく翌日には歩行できます。主な合併症としては、出血(当科では自己血にて対処)等の手術時の身体各臓器への負担、感染症、他臓器の損傷等が代表的なものです。
 原則的に術前に化学療法を行います。
 尿管癌が尿管の下端にある場合、腹腔鏡による下部尿管部分切除術行うことがあります。また、腫瘍が小さい場合尿管鏡で腫瘍を切除する経尿道的尿管腫瘍切除術を行う事もありますが同側の腎盂尿管への再発の可能性があります。

化学(抗癌剤)療法
 全身化学療法は、手術ができない方あるいは手術前の補助化学療法として行います(術前化学療法を原則的に行います)。また、細い管を腎盂や尿管に入れて化学療法剤やBCGを注入する場合もあります。

免疫療法
 免疫治療剤を点滴で投与し、自分の体の免疫細胞の作用を増強させ、癌を攻撃します。

2010年から公立館林厚生病院に初診の腎盂尿管癌は126症例でした。

2010年からの病期

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stage 1≧ stage 2 stage 3 stage 4 不詳
症例数 44 23 23 35 1 126

2010年からの治療内容

stage 1≧ stage 2 stage 3 stage 4 不詳
後腹膜鏡下腎尿管全摘術 17 5 6 1 0 29
開腹腎尿管全摘術 3 0 2 0 0 5
後腹膜鏡下腎尿管全摘術+化学療法 2 7 5 4 0 18
開腹腎尿管全摘術+化学療法 0 0 2 2 0 4
後腹膜鏡下下部尿管切除 4 1 0 0 0 5
開腹下部尿管切除 8 2 0 0 0 10
化学療法 0 0 2 24 0 26
その他 5 2 1 0 0 8
治療不能あるいは経過観察 5 9 6 5 2 27
治療拒否あるいは他院での治療希望 4 1 1 1 0 7
48 27 25 37 2 139

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最終更新日:2023.04.01

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